日本でもSNSやブログが急速に普及している。もちろん書き込む人も増えている(三日坊主の数も膨大であるが)が,ブログを読む人の数が増えているのが興味深い。先頃の野球関連ではライブドアの堀江社長のブログサイトはもの凄いアクセスになった。YahooやGoogleの検索エンジンを利用する人が増加した中で,ブログが上位にヒットすることが増え,知らず知らずのうちに閲覧するようになった人も多いだろう。こうした傾向は生活者が情報を収集する際に,企業HPやポータル系が提供しているコンテンツとは別にブログ系の個人が発信する様々なコンテンツが大きな影響力を持ってきていることが類推される。筆者らは先日「関心空間(http://www.kanshin.com/)」というブログ系のサイトを利用して一般のインターネット利用者とブログ系サイトを利用する人の比較調査を行った(2004年7-8月実施ユニークID社,電通総研,D4DRの3社共同調査)その結果を引用しながら考察してみたい。
○ 一般インターネット利用者と関心空間ユーザーの違い
まず一般インターネット利用者と関心空間ユーザーの違いは大きく以下のようなものが見受けられた。
・ ブログ系利用者は一般的に言われるヘビーユーザーの傾向があり,一日の利用時間,インターネット利用歴の長さ,掲示板など書き込み系の利用などは関心空間ユーザーの方が高い数値が出た。
・ 関心空間ユーザーは商品を購入する時に友人や知人のおしゃべりやメール,インターネット上の書き込み情報を信じる割合が高い。
・ 一方でインターネット上のメーカーのHP,テレビや雑誌からの情報については大きな違いは見られない。
・ その傾向として日用品よりも車や家電など耐久消費財になるほど傾向が強くなる。
・ インターネット上の書き込み情報に対する信頼性は関心空間ユーザーは自己判断能力があると考えており,一般ネットユーザーの方が情報の内容に対する警戒度が高い。
・ 関心空間ユーザーの方が情報感度やイノベーター度は高い。
・ 関心空間ユーザーの方がややラジオを聞いている傾向がある。
○ 関心空間ユーザーの特性
・ 関心空間ユーザーの利用目的としては「自分の興味と人の興味がつながるが」ほぼ6割(ただしこの機能はブログのトラックバックよりも強化されており,関心空間固有の機能)でトップ。以下読み物として面白い,常に新しい情報にふれていたいが5割,暇つぶしや調べたい,自己表現などの利用目的は2割から3割ぐらいであり,コンテンツとしての価値が非常に高く評価されていることがうかがえる。
・ また関心空間を利用して実際に購入した商品であるが,利用者の半数近くが書籍やCDの購入で参考にしている。その他多くの商品の購買行動に大きな影響を与えるようになっている。
図表 関心空間の利用目的
図表 関心空間を参考にして購入した商品・サービス
○ 利用者のセグメント化
次にインターネット利用者,関心空間ユーザーそれぞれを以下の4つに分類して分析した。
Seg1:ブログなどは利用しないがインターネットを長時間利用する人
Seg2:ブログなどの操作系機能を多く利用し、かつインターネット利用時間も長いユーザー
Seg3ブログなどを利用せず、インターネット利用時間も短いユーザー
Seg4:ブログなど操作系機能を利用するが、インターネット利用時間がそれほど長くない人
分析の結果一般のインターネットユーザーはseg2のユーザー以外現段階ではそれほどインターネット上の書き込み情報を信頼していないことがわかった。自己判断能力など情報リテラシーの問題もあるのかも知れないが,メーカーのHPの情報を信頼するという値は高いので,ブログ系の情報の購買への影響度は特定セグメントにとどまっている状況が伺える。しかし,一方リアルな口コミなどで影響力を持つseg2のユーザーはブログ系の情報が購買に大きな影響を与え始めているので,seg2ユーザーが間接的にブログ系の情報をseg1やseg3などのマスの生活者に影響を与えることが予想される。seg2やseg4などブログ系の情報を活用する層とseg1やseg3のそれ以外の層でマス広告の影響力や購買行動に大きな違いが生まれはじめていることが伺えるため,企業のマーケティング戦略もしばらくの間,2つの展開をしていく必要も出てくることも予想される。
○インターネット上の知識流通が変える企業マーケティング
現在関心空間におけるアフリエイトやキーワード広告の利用は急速に拡大しており,消費行動への影響は定量的にも把握されはじめている。従来コミュニティや口コミなどと言われ,捕捉不可能だった生活者の発信する情報の影響力はブログの普及などで目に見えるものになってきており,一方で情報発信をした個人にお金が還元される仕組みも普及が進み,こうした動きを加速させるビジネスのメカニズムも生まれ始めている。ブログ系コンテンツの拡大はこれまで広告宣伝と呼ばれていた世界を本質的な「知識流通ビジネス」の世界へ変貌させる最初の一歩になる可能性も秘めているのかも知れない。
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