藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

2005年4月18日月曜日

eマーケティング概論2005 4大メディアからアクティビティへ

(2005年6月、米国版「Wired」の日本版「Hotwired Japan」で掲載されたコンテンツを編集しました)

eマーケティングいよいよメジャーへ

インターネットの登場でマーケティングに革命が起きると多くのマーケッタは感じてきたし,実際大きく変わっているのであるが,Webやメールを活用したマーケティングは別世界の中でユニークな存在として,毎年少しずつ宣伝・広報・営業部の予算を確保しながら成長してきた。One-to-Oneマーケティング,バイラルマーケティング,パーミッションマーケティングなど企画書の中を通り過ぎていったキーワードも多数存在したがインターネットを積極的に利用するのはあくまで特別な人たちであり,マーケティング全体の中ではまだまだ一部の人たちに対するアプローチでしかなかった。一方でTVへの大量出稿と店頭での販促など従来アプローチは,脈々と流れてきたこれまでのノウハウを継承しながら続いてきており,TVでURLが告知することや,キャンペーンの応募にメールが使えるようすることで,新しい技術に寛容であるかのように見せながらも従来のマーケティングアプローチの前提を崩すことはこれまではなかっただろう。
しかし2004年には日本のインターネットと携帯インターネットの普及率も60%を越え,そのうちの半分以上はブロードバンド化し,気がつくと自分の商品のユーザーの中に新聞もテレビも見ていないインターネットだけで情報を得ているセグメントが存在し始め,購買の意志決定にインターネットがメインに躍り出ている人々は急増している。筆者らが昨年行った調査でも最近3ヶ月の平均視聴時間でインターネット利用者のうち男性は2時間以上みている比率が地上波テレビは43%でインターネットは50%と逆転している(ちなみに女性はテレビが57.4%でインターネットが47.4%)。インターネット広告市場もラジオを越えたと言われており,少なくとも一部の大手企業のマーケティングにおいては本気にeマーケティングを主において予算のプランを立てる最初の年になるのかも知れない。

AIDMAからAIDSUASSへ

マーケティングという言葉は何気なくよく使われているが,ここでもう一度再確認しておこう。かの有名なマーケティングの大家フィリップ・コトラー教授は「マーケティングとは,価値を創造し,提供し,他の人々と交換することを通じて,個人やグループが必要とし欲求するものを獲得する社会的,経営的過程である。」と定義している。ここからも価値を創造したり,交換したり,欲求を理解したり,獲得する手段そのものが変化すればその過程も変わらざる追えないことがわかる。つまりマーケティングはコミュニケーションによるところが多く,そのコミュニケーションがデジタルネットワークとして変化することがそのままマーケティング自体の変化を促すのは定義からも明らかである。

マーケティングにおいてもっとも理解しやすい消費者の購買行動のプロセスは従来以下のようなAIDMA理論が一般的に使われてきていた。

従来のAIDMA理論
○ Attention(注意)
・テレビ広告などで注意を引かれる
○Interest(興味)
 ・商品に興味を持つ
○Desire(欲望)
 ・商品が欲しくなる
○ Memory(記憶)
・ブランドや商品を覚える
○Action(行動)
 ・購買行動を起こす

確かにマスマーケティング時代においては人々は常に新しい商品やサービスを期待し,欲求を持ち続けている人であったため,新しい商品に便利さなどをアピールし,それが伝わりさえすれば商品は購入してもらえた。しかし,物で満たされた現代日本においては革新的な技術でメリットが生み出された商品や個人個人の生活の質を向上させるような商品・サービスでなければ人々が購入しなくなってきたため,売るだけでよい状況は終わりをつげた。消費者は消費するだけの人ではなく,自らマーケティングプロセスにも参画するプロシューマー化してきており,現代の購買行動プロセスは複雑化している,より詳細化すると以下のような拡張が必要になるだろう。

新しいAIDSUASS理論
○ Attention(注意)
・注意を引く
○Interest(興味)
 ・商品に興味を持つ
○Desire(欲望)
 ・商品が欲しくなる
○ Search(探索)
・ 商品情報を調べる
○ Understand(理解)
・各種情報や友人などから学習し理解し,納得する
○Action(行動)
・ 購買行動を起こす
○ Satisfaction(満足)
・ 利用を満足し,間違っていなかったことを確認する
○ Sympathy(共感)
・商品やサービスに共感し,他人にも勧めたり,自らの商品,サービスのために行動を起こすようになる

このプロセスにおいてインターネットを中心とするデジタルコミュニケーションの果たす役割は大きくなってきており,以下のように整理できる。

1. 興味や欲望を捕捉できる
・ SEM(サーチエンジンマーケティング)が最たるものであるが,デジタルコミュニケーション上ではその人が何に関心があるのかを捕捉することができる。
・ また今どこにいるのか,何をしているかまでわかるため,その興味にあわせて商品やサービスをリアルタイムで提供することが可能になった。

2. 探索と理解が安易になった
・ 書籍で調べたり,友人に話しを聞いたり,店員と相談したり,これまでも可能ではあったが,デジタルコミュニケーションでは検索エンジンや比較サイトなどで瞬時に商品情報とそれを利用した人々の感想などの情報を入手することができるようになった。
・ さらに携帯などを利用することで店頭で商品を手に取りながらその商品の情報も入手可能になった。

3. どこでも購入できるようになった
・ ECの普及で欲しい商品はかなりのものがいつでもどこでもその場で予約・購入できるようになった。

4. 利用者同士の交流や商品開発への参加が可能になった
・ 自分の商品を利用している人同士でコミュニケーションすることが容易になり,使い方などの知識の交換も可能になった。
・ メーカーとの直接コミュニケーションが可能になり,商品の課題などを直接伝えることが容易になった。

5.販売協力ができるようになった
 ・アフリエイトプログラムなどで自分が商品を販売することに直接協力できるようになった。

このようにこれまでは,理論はあっても適切なコストで実行可能な手段がなかったために,広告・宣伝と値引きぐらいしかできなかったマーケティングの世界は多様なシナリオをマーケッタが用意することができるようになり,その土壌もできあがりつつあると言える。

アクティビティを握れ!

こうした時代において主役になるのは生活者のアクティビティ(行動)を握っているプレーヤーになる。これまでは「テレビを見る」「ラジオを聴く」「新聞を読む」という行動そのものが大きなアクティビティであり,そうしたメディアを握ることで伝える手段を抑えることが可能になり,注意や興味を持ってもらう情報を提供することで大きな力を持つことができた。あとは店頭という重要なアクティビティの上で直接目立つところに商品をおいたり,安売りしていることを伝えたり,店員の力で買いたくさせるということが可能な方法論であった。つまりメディアと店頭しかコミュニケーションできる手段は存在しなかったのである。しかし,「韓国のドラマに興味を持っているPCの前に座っている人」や「渋谷駅を18時に降りたばかりのOL」や「コンビニでお弁当を電子マネーで購入した直後の人」などがリアルタイムに捕捉できるようにな状況の中では,こうしたアクティビティにひも付いた商品情報の提供がPC,携帯,店頭・街頭ディスプレイ,レジなどのデバイスで可能になり,決済や購入段階での値引きもリアルタイムに自由自在になる。過程の情報も補足できるため効果測定も確実になり,投資対効果を明確になる。このことは以下のようにADを伝達するのにメディア主導でバリューチェーンを想定していたものをアクティビティ主導にすることが可能であるということであり,インターネット広告もこれまではどちらか言うとメディア化したポータルサイトを中心にメディア主導の発想であったが,キーワード連動型広告のように本来のデジタルコミュニケーションが得意なアクティビティ主導の流れに移行することになるであろう。その際には人々のニーズがどのように生まれ,何が意志決定の要因になるのか,共感した知識情報をどのように伝達するのかという前述のAIDSUASSに基づいたシナリオとアクティビティとどう連動するかが重要になると言え,企業は多くの人々にリーチするという行動から自社の商品・サービスにおいて重要なアクティビティを握るという行動原理に変わることになるだろう。

○メディア主導のバリューチェーン
AD+コンテンツ+デリバリー手段(4大メディア(TV,ラジオ,新聞,雑誌),チラシ,ポスター等)+行動(読む,見る,聴く)

○アクティビティ主導のバリューチェーン
AD(もしくはAD+コンテンツ)+デリバリー手段(4大メディア,PC,携帯,店頭・街頭ディスプレイ,レジ等)+行動(移動,探索,学習,買い物,談笑等)

マーケティングコストの新しい考え方

商品やサービスには原価と販売マージン以外に以下のマーケティングコストがかかるものである。

マスマーケティングコスト(4大メディア):認知させ,興味をもたせるコスト
販促コスト(チラシ,店頭POP):店頭への誘因と購買の後押しコスト
値引きコスト(クーポン,値引き原資):後押しコスト
在庫コスト:売れ残り

これらのコストはアクティビティが重要になる時代においては販促コストと値引きコストがアクティビティコスト(最適なタイミングで最適な商品情報を最適な価格で提示するコスト)に移行し,マスマーケティングの比率は下がり,在庫コストも最適化されるため減少し,相対的にはマーケティングコスト全体は以下のような形に配分が変化していくことになると予想される。

図表 マーケティングコストの配分変化


これまでもブランド別のメディアの最適配分などの方法論が話題になり,マーケティングコスト全体の最適化は多くの企業の関心事ではあるが,今後eマーケティングの世界では商品・サービス別のAIDSUASSのシナリオを描き,それに基づいてマスマーケティングとアクティビティに最適に配分することがマーケッタの需要な役割になる。あわせて従来絶対的なメディアとして君臨してきたテレビ局や新聞社,雑誌社も新しいアクティビティのどこかを握るための戦略的アライアンスが必要になるだろう。逆に生活者の様々な行動を握っているプレーヤー(鉄道会社,コンビニ,検索エンジンサイト,携帯電話会社等)にとっては新しいビジネスチャンスが生まれると言える。広告代理店もこうしたアクティビティプレーヤーとの関わりは必須になり,巨大メディアを握ることから,多様なアクティビティを握ることと,それを最適にマッチングできる能力がマーケッタ達から期待されることになるだろう。2005年はいくつの企業がこうしたeマーケティングのスタイルを実践するかが楽しみである。。

2005年2月14日月曜日

情報家電市場は花開くか ipodの成功とライブドアが放送局を買う理由

(2005年2月、米国版「Wired」の日本版「Hotwired Japan」で掲載されたコンテンツを編集しました)

○早くも失速デジタル景気?
 つい先日まで景気の牽引役として,薄型大画面テレビ,DVDレコーダー,デジカメと新三種の神器などともてはやされていたデジタル家電景気の雲行きが,早くも怪しくなってきている。その理由は急激な価格下落が進み,各メーカーが利益を出せなくなってきているというのが大きな理由である。この価格下落を主導したのは韓国勢とも言える。韓国勢の強みのひとつは,サムソンを筆頭に強気の設備投資を続けてきたことで半導体メモリー,液晶などデジタル家電の主要部品で世界的に高いシェアを持っており,彼らの部品における価格競争力はとても強い。主要部品で競争力があれば,完成品でも価格のリードが可能になり,日本勢の予想を上回る攻勢をかけてきている。アナログ時代は各企業が職人的な技術で微妙な製品の性能の差を持つことが可能であったが,デジタル時代の商品は所詮誰でも手に入る部品の組み合わせでしかない。逆に言えばデジタル時代はオープンな規格を広げることの方が重要であり,一社だけ排他的な商品を出すわけにも行かない。そうなるといソニーのように薄型大画面テレビ市場の参入に出遅れた企業は主要部品も外部企業から調達しており,価格競争になれば,かつてのように性能での優位性をアピールすることもできず,そのまま自社の利益が圧迫される構造になっている。一方シャープのように自社で部品である液晶の競争力がある会社はまだまだ高い利益をほこっている。ソニーもサムソンと合弁で液晶の工場を作ったり,戦略的なセルという半導体を作るなど,こうした状況を打開する手は打ってはいるが,まだそれらが花開くまで時間がかかり現状は苦戦を強いられている状況である。
 このようにデジタル家電はアナログ時代の競争戦略を大きく変えてしまったわけであるが,逆に現状のようなハードウェア商品単体として利益を出すビジネスモデルそのものが問題とも筆者は考える。本来情報家電に期待されているのはネットワークとハードウェアとサービスが一体となったものであり,そのトータルなサービスでの収益の分配モデルこそが本来の情報家電ビジネスだと考える。そのためには,市場全体の生態系を見極めながら自社のポジションを探る新しい考え方に切り替える必要があるだろう。

○ ipodの成功理由
ソニーにじたんだを踏ませているもうひとつのサービスがある。ご存じ好調を続けるipodである。日本ではipodはHD&メモリー型音楽プレーヤーであるから,先のデジタル家電のようにハードウェアとして儲かっていることは間違いないのであるが,欧米ではipodというハードウェアとiTunesミュージックストアというインターフェイスに優れたソフトウェアと音楽ダウンロードサービスを組み合わせたトータルなビジネスモデルで高い収益をあげている。そもそもウォークマン以来,CD-ROM,MDと媒体を変えつつも,携帯音楽プレーヤー市場を自ら創造したブランド力からも圧倒的な強さを誇ってきたソニーが完全にシェアを奪われている状況である。しかも,ソニーは長らく,コンテンツ市場にも力を入れ,レコード会社自身も経営するなど,多くのコンテンツ権利まで持っているにも関わらずのこの状況がますます悔しさを倍増させている。
では何故ipodはここまで成功したのであろうか?その要因をここで分析してみたい。
1) クローズでシェアが小さかったこと
ネットワークを利用した音楽サービスはこれまでにも多数ベンチャー含めて挑戦されてきた。しかし,Windowsプラットフォームの上では違法コピーの問題があり,P2Pソフトの問題も拡大している中では問題が起きた時の影響が大きすぎるため,レコード会社等も本格展開には慎重な状況であった。しかしMacのシェアは米国では5%程度であり,しかも専用ハードウェアをベースとすることで特定の範囲のクローズなサービスであると認識され,音楽業界の支持を得られやすかった。(実験するには丁度よい場であったということでもある)その後,成功を見た後でアップル側もWindowsでも利用できるように移行し,両社ともにWin-Winな関係で一気に市場を拡大させることができた。
2)PCメーカーであったこと
 独自OSを採用しているMacであるが,今やPCの世界ではほとんどの技術がオープンなデファクトスタンダード技術の上に成り立っている。今やMacも実際のところ利用されている技術はオープンな技術であり,部品や主要ソフトウェアはWindowsでも利用されているものがほとんどである。その結果として水平分業の効果でMacも低コスト化な商品を出せるようになっている。ipodも独自圧縮技術を推奨しているものの,MP3など他の標準的な圧縮技術に対応しており,中身はPCベースの既存技術の組み合わせに過ぎない。そのことが展開を容易にしたと言えるだろう。
3)利用者からはトータルサービスに見えたこと
 技術的には水平展開されているPC市場のプレーヤーであるが,利用者から見たときにMacはWindowsとは異なるプラットフォームである。アップルが出すipodは利用者から見ればやはり独自のコンセプトであり,そのサービスはとてもオリジナルに見える。音楽を購入してダウンロードからiTunesというアプリケーション上でのインターフェイス,そしてハードウェアとしてのipodのデザインとインターフェイスまで利用者はアップル社が提供するトータルな世界観の中で過ごすことができ,裏側の技術などを知る必要はない。さらにそのことで「好きな音楽を一曲聴く」という価値を提供したのではなく,「ipodという音楽を聴くスタイルが楽しい」という価値を提供できたことが何よりも最大の成功要因と言えるだろう。

このようにアップルの成功は多くの示唆を与えてくれる。PCの世界のプレーヤーでありながら,オープンなインターネット技術を使いこなす優れたハードウェアを出す,家電メーカーの振る舞いをもすることができたからである。そしてそれを表すキーワードはサービス業としての顧客へ最終的にどのような価値を提供するかを素直に創り上げたことではないだろうか。

○ サービス業になれるか?
 現状情報家電分野へはPC系と家電系の争いとも言われているが,双方難しさはある。例えばPCのWindows陣営の方は各水平プレーヤーが強く,OSやアプリケーションからマイクロソフトはアップルのように魅せたいが,メーカーであるデルやHPもそう魅せたいし,MPUのインテルも狙っていればインターネットサービス企業のアマゾンも狙っているだろう。このように各階層のプレーヤーが独自に主導権を取ろうとして行くほど利用者の混乱は膨らむばかりである。一方の家電メーカー陣営は垂直統合で自社のハードウェア中心に展開することを試みるだろうが,前述した通りデジタルの世界ではそれは非常に難しい。あくまでハードウェア中心で進めば中途半端なサービスが提供されることになる。
アップルの成功から示唆されるように,今後の情報家電ビジネスにおいて,何より重要なことはサービス業であることを提供企業が再認識することであろう。そのためには何よりも顧客からの見え方が重要になる。自分がサービスを受けている相手をどれだけ意識してもらえるか。そのブランドにロイヤリティを観じているか。そのサービスに対価を払って良いと考えているか。そうしたポイントが重要になる。
 こうした意味では携帯電話業界はもうひとつ参考になるだろう。日本においては通信事業者主導で市場が形成されたため,端末のハードウェアも通信事業者主導で価格が低価格で提供され,メーカー色は薄まっている。iモードに代表されるネットワークサービスも通信事業者の意向が強く反映されている。
こうした現状には批判もある。通信料金が高い,端末メーカーが儲かりにくい。コンテンツ事業者がしばられていると。しかし,こうした顧客から見たときに統一的なイニシアティブをとれるプラットフォームプレーヤーの存在は安心感がある。対価を支払う相手としてサービス水準を保証するブランドこそがプラットフォームプレーヤーであるからである。またプラットフォーム間の競争が適正に行われれば,利用者の選択肢と利便性は確保されるだろう。iモードも様々な批判はあるにせよようやく国際展開が進みつつある。プラットフォームが広がれば,メーカーやコンテンツ提供事業者もそのチャンスは拡大するというメリットもある。

○顧客価値をにぎるプレーヤーが重要
 それでは今後の勝負はどうなるであろうか,前述したプラットフォームプレーヤーにどこがなれるのかという戦いでもある。デジタル家電の主役が薄型大画面テレビであるように,やはりテレビは情報家電の主役になる可能性が高い。だとすれば放送局は中心的なプレーヤーになるポテンシャルが高いプレーヤーと言えるだろう。しかし,一方的な放送に慣れた彼らには顧客と直接リレーションをにぎれるか難しい。放送法の既得権益に守れている部分としばりを受けている部分があり,残念ながら現状ではipodのようなイノベーションを自ら生み出すことは難しいであろう。かろうじてテレビショッピングは直接顧客と対話するのでそこから発展する可能性はあるかも知れない。米国ではCATV局が注目のプレーヤーであるため,その成功モデルが出来たあとで国内でようやく重い腰をあげることになるシナリオはあるかも知れない。
 一方,この放送局の買収で話題のライブドアをはじめ,Yahoo,楽天などインターネットサービス企業もにわかに有力プレーヤーになりつつある。Yahooはすでに独自のテレビ放送も提供しているし,インターネット上ですでに多様なサービスを提供しており,統一的なブランドで顧客に価値を提供していく流れから,情報家電分野にその戦いの場を移すのは自然の流れである。M&A力が高いところも有力視できる材料であり,ここで記述している他の分野のプレーヤーを飲み込んでプラットフォーム化する可能性は大きい。
 ISPを含む通信事業者も候補ではある。すでに100万単位の顧客から毎月対価を確実にとっている基盤は強みである。何よりも日本ではNTTは光ファイバーという最強兵器を使い大逆転を虎視眈々と狙っている眠れる?獅子である。前述した通り,携帯電話事業者は携帯という市場で利用者の生活の一部をすでに握っており,携帯の枠を飛び越えた瞬間にかなり有力プレーヤーになる。
アップル,マイクロソフトは日本ではなかなか厳しいかも知れないが,世界的な展開力を背景に日本での戦いを挑んでくることは間違いない。ipodが映像分野で攻勢をかけてきた時は面白い展開が期待できるだろう。
 では冒頭で苦戦している現在デジタル家電を提供しているメーカーはどうであろうか?松下やシャープなどはやはり韓国勢に優位にたてる部品をしっかり握りハードウェア中心に,上記の様々なプレーヤーとのアライアンスに戦略を移していくことになるだろう。もはや家電メーカー自体が主役になることは幻想になる。しかしソニーはもちろん意地でも市場で戦いを挑むことは間違いない。実際ISPのSo-NetやICカード,携帯などで電子マネーフェリカなどを展開し,顧客を握るアプローチも行っている。そういう意味ではこれまでの戦いは前哨戦であり,いよいよソニーの本格的な戦いが幕をあけると言えるだろう。

大容量なネットワークとユビキタス化の進展は生活者の家庭を中心とする様々な行動における価値ある「サービス」を提供可能とする大市場である。PCでないデジタルなハードウェアを販売するという市場はほんの予行演習にすぎない。まさにデジタル市場のK-1である本格的な異種格闘技戦の幕が開こうとしている。

2004年12月10日金曜日

高まるブログ系コンテンツのマーケティングに対する影響力 −関心空間調査結果から-

(2004年12月日本経済新聞電子版の「ネット時評」に掲載されたコンテンツを編集しました)

日本でもSNSやブログが急速に普及している。もちろん書き込む人も増えている(三日坊主の数も膨大であるが)が,ブログを読む人の数が増えているのが興味深い。先頃の野球関連ではライブドアの堀江社長のブログサイトはもの凄いアクセスになった。YahooやGoogleの検索エンジンを利用する人が増加した中で,ブログが上位にヒットすることが増え,知らず知らずのうちに閲覧するようになった人も多いだろう。こうした傾向は生活者が情報を収集する際に,企業HPやポータル系が提供しているコンテンツとは別にブログ系の個人が発信する様々なコンテンツが大きな影響力を持ってきていることが類推される。筆者らは先日「関心空間(http://www.kanshin.com/)」というブログ系のサイトを利用して一般のインターネット利用者とブログ系サイトを利用する人の比較調査を行った(2004年7-8月実施ユニークID社,電通総研,D4DRの3社共同調査)その結果を引用しながら考察してみたい。

○ 一般インターネット利用者と関心空間ユーザーの違い
まず一般インターネット利用者と関心空間ユーザーの違いは大きく以下のようなものが見受けられた。
・ ブログ系利用者は一般的に言われるヘビーユーザーの傾向があり,一日の利用時間,インターネット利用歴の長さ,掲示板など書き込み系の利用などは関心空間ユーザーの方が高い数値が出た。
・ 関心空間ユーザーは商品を購入する時に友人や知人のおしゃべりやメール,インターネット上の書き込み情報を信じる割合が高い。
・ 一方でインターネット上のメーカーのHP,テレビや雑誌からの情報については大きな違いは見られない。
・ その傾向として日用品よりも車や家電など耐久消費財になるほど傾向が強くなる。
・ インターネット上の書き込み情報に対する信頼性は関心空間ユーザーは自己判断能力があると考えており,一般ネットユーザーの方が情報の内容に対する警戒度が高い。
・ 関心空間ユーザーの方が情報感度やイノベーター度は高い。
・ 関心空間ユーザーの方がややラジオを聞いている傾向がある。

○ 関心空間ユーザーの特性
・ 関心空間ユーザーの利用目的としては「自分の興味と人の興味がつながるが」ほぼ6割(ただしこの機能はブログのトラックバックよりも強化されており,関心空間固有の機能)でトップ。以下読み物として面白い,常に新しい情報にふれていたいが5割,暇つぶしや調べたい,自己表現などの利用目的は2割から3割ぐらいであり,コンテンツとしての価値が非常に高く評価されていることがうかがえる。
・ また関心空間を利用して実際に購入した商品であるが,利用者の半数近くが書籍やCDの購入で参考にしている。その他多くの商品の購買行動に大きな影響を与えるようになっている。

図表 関心空間の利用目的




図表 関心空間を参考にして購入した商品・サービス



















○ 利用者のセグメント化
次にインターネット利用者,関心空間ユーザーそれぞれを以下の4つに分類して分析した。
Seg1:ブログなどは利用しないがインターネットを長時間利用する人
Seg2:ブログなどの操作系機能を多く利用し、かつインターネット利用時間も長いユーザー
Seg3ブログなどを利用せず、インターネット利用時間も短いユーザー
Seg4:ブログなど操作系機能を利用するが、インターネット利用時間がそれほど長くない人

分析の結果一般のインターネットユーザーはseg2のユーザー以外現段階ではそれほどインターネット上の書き込み情報を信頼していないことがわかった。自己判断能力など情報リテラシーの問題もあるのかも知れないが,メーカーのHPの情報を信頼するという値は高いので,ブログ系の情報の購買への影響度は特定セグメントにとどまっている状況が伺える。しかし,一方リアルな口コミなどで影響力を持つseg2のユーザーはブログ系の情報が購買に大きな影響を与え始めているので,seg2ユーザーが間接的にブログ系の情報をseg1やseg3などのマスの生活者に影響を与えることが予想される。seg2やseg4などブログ系の情報を活用する層とseg1やseg3のそれ以外の層でマス広告の影響力や購買行動に大きな違いが生まれはじめていることが伺えるため,企業のマーケティング戦略もしばらくの間,2つの展開をしていく必要も出てくることも予想される。

○インターネット上の知識流通が変える企業マーケティング
現在関心空間におけるアフリエイトやキーワード広告の利用は急速に拡大しており,消費行動への影響は定量的にも把握されはじめている。従来コミュニティや口コミなどと言われ,捕捉不可能だった生活者の発信する情報の影響力はブログの普及などで目に見えるものになってきており,一方で情報発信をした個人にお金が還元される仕組みも普及が進み,こうした動きを加速させるビジネスのメカニズムも生まれ始めている。ブログ系コンテンツの拡大はこれまで広告宣伝と呼ばれていた世界を本質的な「知識流通ビジネス」の世界へ変貌させる最初の一歩になる可能性も秘めているのかも知れない。


※本調査についての問い合わせは筆者(fujimoto@d4dr.jp)まで。