藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

1999年11月8日月曜日

インターネット回線の固定料金化で生産性向上?

(1999年11月、米国版「Wired」の日本版「Hotwired Japan」で掲載されたコンテンツを編集しました)
多くの人が何よりも第一にインターネットの未来に期待していること,それはとてもクールなホームページが登場するよりも,ものすごい画期的なサービスが登場したりすることよりも,恐らくとても現実的な課題として,現在自分が利用しているネットワークの速度がストレスを感じなくなることだろう。パソコンのMPUのスピードは1年経てば,前のパソコンが遅く感じるぐらいどんどん高速化し,数年前の古いアプリケーションだと画面のスクロールが速すぎて,行き過ぎてしまったりするような状況であるにも関わらず,インターネットのホームページはもう何年も相変わらずじわじわと出てくる状況に変わりは無い。
これはインターネット上でのサービスが花盛りであり,多くのネット企業が既存の企業よりも高い株式時価総額を付けているような米国でも依然として続いている状況であり,顧客はいつでも「待ちぼうけ」である。逆説的に言えば,こんなに速度の遅い環境でも利用者がこんなにインターネットを利用してくれるということは,それほどニーズが高いサービスであるとも言えるのかも知れない。
しかし,ようやくインターネットのインフラにも明るい未来が見え始めたようである。米国でもこれまでは電話線がメインであったが,次世代インフラの本命とされているのがCATVである。すでに普及が9割を越えているような状況であるが,これが今急速にデジタル化されており,これを活用することで電話の100倍を越えるような非常に高速な通信ネットワークが全米に構築されていくことが期待されている。
かのビルゲイツ氏もこのCATVに注目している。現在全世界のOS市場でシェア95%を誇る「WindowsOS」でさえも,現在は全米の世帯の半数にしか利用してもらっていない,それはパソコン先進国の米国でさえも世帯普及率は5割を越えたところで伸び悩んでいる状況であり,全国民に普及させるためにはこのCATVの端末であるセットトップボックス(STB)にWindowsOSを乗せることでようやく全米制服の夢が実現されるようになるという戦略であり,現在大手電話会社のAT&Tと組み米国のCATV会社を次々と傘下に納めつつあるところである。
日本でもすでにいくつかのCATV会社が高速なインターネットサービスを提供しており,大手の東急ケーブルでも利用者は一万人を越えている。日本の場合にはCATVの普及率の低く,経営も赤字の第三セクタのCATV会社が多く,新たにデジタル投資をする余力が無いところから,米国のようにCATVが必ずしも本命ではなく,むしろ携帯電話などが有力視されているのであるが,このあたりの話しはまた別の回で触れたいと思う。さて,このCATVサービスは日本では数少ない定額制の使い放題のサービスであるところも特徴であり,面白いデータとしては,あるCATV会社が利用状況を調べたところ,夜の8時に利用ピークが来ているというデータになった。通常電話を利用したインターネットの世界では夜11時に利用の最大のピークが来る。これは深夜料金やテレホーダイの開始時間であり,電話料金が安くなる時間だから,本当は寝たい人も無理して起きて利用していることだってあり得るということだろう。今後インターネット利用が定額制になれば,テレビで言うゴールデンタイムがそのままインターネット利用のゴールデンタイムになるのである。すでに市内網は定額制の米国ではゴールデンタイムのCNNの視聴率のライバルはAOL(アメリカオンライン)になっている。
日本もISDNでは一部で定額制の実験がスタートした。定額制の環境が当たり前になれば,インターネットを利用する時間も大きく変わることになるのだろう。今は多くの優秀な人が寝不足にしなっていて,日本全体の生産性が下がっているのかも知れない。だとしたらますます急がないといけないですねNTTさん。