藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

2002年2月19日火曜日

ネットビジネスと規制-古物営業法改正問題-

(2002年2月、米国版「Wired」の日本版「Hotwired Japan」で掲載されたコンテンツを編集しました) 


ここのところ,多くのネットビジネスにおいて規制の問題がでてきている。悪質な事業者の排除を目的とした2001年の訪問販売法の改正のあたりから増え始め,プライバシーや著作権のトラブルが増える中,プロバイダーの責任範囲を定めたプロバイダー責任法に続き,社会問題化している迷惑メールについても現在,その規制について経済産業省が特定商取引法を改正しようとしているのに対し,これは議員立法の別案も登場して議論が進んでいる。このように目の前の問題に対し,既存のルールを少しでも適用するための法改正の動きが活発になっていると言える。しかし,この流れが行き過ぎることで,インターネットがもたらした「サイバースペース」が古いパラダイムに逆行することを恐れる。

現在開会されている通常国会において,警察庁が「古物営業法」を改正しようと準備作業を進めている。筆者はこの新しい規制がインターネットオークションビジネスの健全な発展に支障を与えることを危惧している。
今回の古物営業法改正の背景はインターネットオークションを舞台に急増している盗品売買について防止策をこうずるためのものである。確かに少年グループが盗品を売りさばくためにバイクの部品を販売する事例などがでてきており,
何かしらの対策の必要性はあることは事実である。
しかし,今回警察庁が検討している内容は原則規制という従来型の広範囲の規制強化の側面が強く,事業者へ過度の負担を強いる可能性も大きく,こうした前例がその他のeビジネス全般にも波及することなども考慮すると,是非とも慎重な検討を求めたい。

今回検討されている規制ポイントは以下のようなものである。
「事前届出制」
(不適格業者を排除するため,インターネット・オークション事業を営もうとする者は,あらかじめ,都道府県公安委員会に届出書を提出しなければならない。)
「疑わしい古物を発見した場合の警察への申告義務」
(インターネット・オークション業者は,出品された古物が盗品等である合理的な疑いがある場合は,警察への申告を直ちに行うとともに,その結果等から当該疑いに相当な理由がある場合には,出品情報の削除,落札者への連絡などど必要な措置をとらなければならない。)
「行政処分(警察による営業停止処分)」
(インターネット・オークション業者が違法行為を行い,盗品等の売買防止と発見が阻害されるおそれがある場合は,都道府県公安委員会は,「指示」又は「営業停止の処分」を行うことができる。)
「都道府県公安委員会による認定制度」
(国家公安委員会は,安全な(=盗品等が売買されるおそれの低い)インターネット・オークションの運営基準を作成し,インターネット・オークション業者は,基準に適合する旨の都道府県公安委員会の認定を受けることができる。)

こうした従来型の規制に対する筆者の危惧は以下の点である。
こうした規制がどこまで盗品防止に実効性があるのか検証されていないこと
インターネットオークション事業者の定義が難しいことと,eビジネスの技術的革新のスピードは速く,オークション機能の複雑化や既存のB2Cとの融合も進むため,対象範囲が見えないこと
海外のオークション事業者は規制対象にできないこと
新規参入や新しい機能実装など民間の創意工夫や健全な競争を妨げる可能性があること
原則自由,行政手続きの簡素化という行政改革の流れに逆行していること

これまでもインターネットオークションは2年半ほどの短い期間でも事業者の自助努力で格付け機能,エスクロー口座の導入や本人確認の実施,詐欺発生時の補償制度など健全な発展のための工夫は行ってきており,一定の効果をあげてきている。また現在も警察への捜査協力は行われており,業界と警察の協力関係が構築されれば規制の必要性も小さくなると考えられる。確かに既存の規制の中にいる古物商との不公平感が存在する部分の是正は必要かもしれないが,インターネットオークション事業者に対して規制の網をかぶせる方法は本質ではない。筆者の知るところでは海外でも類似の規制は存在していない。
また盗品の問題はオークションのみではなく,様々なネットサービスでも危惧される問題である。そういう意味では拡大解釈が可能になる可能性もあり,多くのネットサービスも規制対象になることや,オークション以外のビジネスが原則規制の流れになっていくことも避けるべきであろう。
こうしたサイバースペースの特殊性がもたらすリアル世界のルールとの不整合はナップスターの問題含め,様々なところででてきているが,そのルールの決め方などはオープンに多様な立場の議論を積み上げて行う新しい社会コンセンサスの作り方に基づくべきであると筆者は考える。従来型の密室権力先行型のルールの決め方はグルーバル対応,技術革新対応において多くの不整合をもたらすことも社会認識ができていると思う。そういう意味ではパブリックコメントすら公表していない現在の法改正の進め方には多いなる問題を感じる。この問題は是非多くの人に真剣に考えてもらいたい問題であり,eビジネス業界全体にとっても今後も増える既存ルールとのコンフリクトの解決における方向性を決める意味で無視することはできないと思う。

ここのところ,多くのネットビジネスにおいて規制の問題がでてきている。悪質な事業者の排除を目的とした2001年の訪問販売法の改正のあたりから増え始め,プライバシーや著作権のトラブルが増える中,プロバイダーの責任範囲を定めたプロバイダー責任法に続き,社会問題化している迷惑メールについても現在,その規制について経済産業省が特定商取引法を改正しようとしているのに対し,これは議員立法の別案も登場して議論が進んでいる。このように目の前の問題に対し,既存のルールを少しでも適用するための法改正の動きが活発になっていると言える。しかし,この流れが行き過ぎることで,インターネットがもたらした「サイバースペース」が古いパラダイムに逆行することを恐れる。

現在開会されている通常国会において,警察庁が「古物営業法」を改正しようと準備作業を進めている。筆者はこの新しい規制がインターネットオークションビジネスの健全な発展に支障を与えることを危惧している。
今回の古物営業法改正の背景はインターネットオークションを舞台に急増している盗品売買について防止策をこうずるためのものである。確かに少年グループが盗品を売りさばくためにバイクの部品を販売する事例などがでてきており,
何かしらの対策の必要性はあることは事実である。
しかし,今回警察庁が検討している内容は原則規制という従来型の広範囲の規制強化の側面が強く,事業者へ過度の負担を強いる可能性も大きく,こうした前例がその他のeビジネス全般にも波及することなども考慮すると,是非とも慎重な検討を求めたい。

今回検討されている規制ポイントは以下のようなものである。
「事前届出制」
(不適格業者を排除するため,インターネット・オークション事業を営もうとする者は,あらかじめ,都道府県公安委員会に届出書を提出しなければならない。)
「疑わしい古物を発見した場合の警察への申告義務」
(インターネット・オークション業者は,出品された古物が盗品等である合理的な疑いがある場合は,警察への申告を直ちに行うとともに,その結果等から当該疑いに相当な理由がある場合には,出品情報の削除,落札者への連絡などど必要な措置をとらなければならない。)
「行政処分(警察による営業停止処分)」
(インターネット・オークション業者が違法行為を行い,盗品等の売買防止と発見が阻害されるおそれがある場合は,都道府県公安委員会は,「指示」又は「営業停止の処分」を行うことができる。)
「都道府県公安委員会による認定制度」
(国家公安委員会は,安全な(=盗品等が売買されるおそれの低い)インターネット・オークションの運営基準を作成し,インターネット・オークション業者は,基準に適合する旨の都道府県公安委員会の認定を受けることができる。)

こうした従来型の規制に対する筆者の危惧は以下の点である。
こうした規制がどこまで盗品防止に実効性があるのか検証されていないこと
インターネットオークション事業者の定義が難しいことと,eビジネスの技術的革新のスピードは速く,オークション機能の複雑化や既存のB2Cとの融合も進むため,対象範囲が見えないこと
海外のオークション事業者は規制対象にできないこと
新規参入や新しい機能実装など民間の創意工夫や健全な競争を妨げる可能性があること
原則自由,行政手続きの簡素化という行政改革の流れに逆行していること

これまでもインターネットオークションは2年半ほどの短い期間でも事業者の自助努力で格付け機能,エスクロー口座の導入や本人確認の実施,詐欺発生時の補償制度など健全な発展のための工夫は行ってきており,一定の効果をあげてきている。また現在も警察への捜査協力は行われており,業界と警察の協力関係が構築されれば規制の必要性も小さくなると考えられる。確かに既存の規制の中にいる古物商との不公平感が存在する部分の是正は必要かもしれないが,インターネットオークション事業者に対して規制の網をかぶせる方法は本質ではない。筆者の知るところでは海外でも類似の規制は存在していない。
また盗品の問題はオークションのみではなく,様々なネットサービスでも危惧される問題である。そういう意味では拡大解釈が可能になる可能性もあり,多くのネットサービスも規制対象になることや,オークション以外のビジネスが原則規制の流れになっていくことも避けるべきであろう。
こうしたサイバースペースの特殊性がもたらすリアル世界のルールとの不整合はナップスターの問題含め,様々なところででてきているが,そのルールの決め方などはオープンに多様な立場の議論を積み上げて行う新しい社会コンセンサスの作り方に基づくべきであると筆者は考える。従来型の密室権力先行型のルールの決め方はグルーバル対応,技術革新対応において多くの不整合をもたらすことも社会認識ができていると思う。そういう意味ではパブリックコメントすら公表していない現在の法改正の進め方には多いなる問題を感じる。この問題は是非多くの人に真剣に考えてもらいたい問題であり,eビジネス業界全体にとっても今後も増える既存ルールとのコンフリクトの解決における方向性を決める意味で無視することはできないと思う。