藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

2000年3月6日月曜日

オークションサイト

(2000年3月、米国版「Wired」の日本版「Hotwired Japan」で掲載されたコンテンツを編集しました)

日本でもオークションサイトが盛り上がってきている。日本で一番大きい楽天市場でも最近はオークションが人気であり発売直後に人気のPlaystation2が出品されたり,結婚まで有効の結構情報サービス会員資格などまでが取引されている。So-netやリクルートなどが支援しているビッダーズでも「大前研一に15分罵倒される券」が7万円で落札され,実際に大前さんにビジネスを相談する様子などがホームページでも公開されている。こうした様子はオークションに参加しなくても見ているだけでも楽しいという意味では「電子商取引」という堅くて無味乾燥なビジネスとは違いエンタティメント性は高い仕組みである。

すでに米国の代表的サイトのeBay(最近は日本版もスタートしている)ではすでに1000万人の人が300万以上のアイテムを取引しあっており,個人から事業者まで入り乱れており,中にはeBayでオークションをするうちに儲けるコツをつかみ,セミプロになっている人も多数出てきているようだ。
元々は1995年に超ペッツ容器コレクターの奥さんと旦那さんが「ペッツのキャンディ容器をインターネットで集めたり、他のコレクターと話せたら、楽しいだろう」という単純な動機でスタートしたらしいが,確かに世の中にはお店でも買えないものは多数存在する。小売りの世界は新製品を中心に,なるべく大量に効率よく売りさばくことで発達してきた,しかし少しでも不良在庫になるものは市場から消えていく運命であり,個人個人の本当の微妙なニーズは半分も満たされていないかもしれない。インターネットのオークションはそうした世の中の細かいニーズとニーズを今まで考えられなかった規模とスピードでマッチングすることを可能にしてきている。
また,オークションはそもそも価格は非常の透明性の高いメカニズムで決まるため,誰かがぼろもうけしているという不信感は存在しない。むしろeBayのように1000万人も集まるとまさに「市場」そのものなので,お店よりもeBayの価格の方が信頼性が高まるということもあるだろう。
また所有の概念も変化するので可処分所得の概念も変わるかもしれない。
中古で取引できるものが増えれば,これまで車や住宅などの高級品が中心だったリサイクルマーケットも広がり「これはeBayでα円で売れるから,高く買ってもいいや」という買い方も増えるだろう。リサイクル社会の推進にはプラスであるが,税金はとりにくい取引が増えることになるかもしれない。

オークションは中古品や,個人間の取引も多いので信用を担保するところも重要になるが,現在のオークションサイトは取引した人が相互に評価しあうという仕組みを導入している。保険を用意しているところもあり,eBayは最高 20,000 円までの保険を用意している。

今後このビジネスが拡大していくと個人のニーズに応じて買い付け代行するパーソナルエージェントサービスやコミュニティを集めて組織的に買い付けに
走る「コミュニティシンジケート」なども多数出てくるでかもしれない。アーティストのお宝などはファン倶楽部がシンジケート組んでビットしたり,貴重な絵画なども一部の金持ちが所有するのを防ぐため,ネットワーク上でコミュニティ組んで落札するということもあるかもしれない。