藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

2013年9月28日土曜日

80年代世代にとってのあまちゃん

「あまちゃん」3代のマーメイド達の物語が終わった。基本は一人の「あまちゃん」な少女の成長ストーリーという宮崎アニメも得意とする普遍的なテーマを軸とした物語であったが,やはり我々80年代青春世代には「潮騒のメモリー」というもうひとつのストーリーが中心だったと言える。実家の春子の部屋はまさに封印された80年代そのもの。あの頃の挫折や苦い想い出,あきらめてしまった夢などが詰まっている。聖子ちゃんカットの若春子や効果的な当時のフラッシュバック映像などによって自分の80年代の思いを春子や鈴鹿ひろみ,太巻に感情移入させて行った。春子と夏ばっぱとの和解,太巻の謝罪などのシーンで我々世代は涙腺が崩壊する。それは彼らと同時に自分の中の潮騒のメモリーが少しずつ溶けていったからだろう。そしてクライマックスは鈴鹿ひろみの歌声で若き日の春子が成仏され,三途の川を渡れなかった80年代のマーメイドが消えて,三代前からマーメイドに歌詞が変わったところ。すべてが昇華されたような不思議な感覚で自分にとってのこの物語は終わった。我々世代を代表する太巻(似ていると言われます),春子,鈴鹿ひろみは最終回ではもう何事もなかったようにいつもの通り仕事をし,北三陸にはいなかった。我々も自分の中の80年代の部屋にそっと鍵をかけ,また2013年のいつもの仕事に戻るのだ。