藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

2003年2月19日水曜日

ITが可能にする次世代FCモデルの可能性 〜マイクロビジネスの重要な受け皿として〜

(2003年2月日本経済新聞電子版の「ネット時評」に掲載されたコンテンツを編集しました) 

現在コンビニを始め、飲食店、各種サービス業などFC(フランチャイズ)と呼ばれるモデルが非常に増えている。企業からすれば小資本でスピーディに展開できるメリットがあり、加盟店からすると社員ではなく独立した店舗として一国一城の主として事業を展開できたり、地元企業が多角化する時に手軽にスタートできる手段だったり、双方のリスクを減らせることが大きな背景として急増している。しかし、現実には大資本側のメリットの方が大きく、全国一律の金太郎飴型のマニュアルをベースに、短期間に業容を拡大するための手法の側面が強い。のれん代やシステム利用としてのロイヤリティは売り上げの高い比率をしめ、予想通りの売り上げがあがらずに苦しんでいるところや、店じまいをするところも増えている。しかし店舗側にとっては独自の裁量でできることはとても狭い範囲であり自助努力には限界もある。まるで中央官庁の考えた施策を言うがまま開発をして、疲弊した地方自治体に似ている部分もあるだろう。
 筆者はITの進展がこうした従来型のFCモデルに大きな革新をもたらす可能性があると考えている。その要因は以下のようなものである。
1. 顧客とのダイレクトなコミュニケーションを行うコストが低下し、個店レベルで顧客ニーズの把握などの管理が可能になり、個店ブランドの確立も可能になる。
2. 物流システムの高度化により、きめ細かい配送や柔軟な品揃えなどにかかるコストが低下したこと
3. 膨大なIT投資は本部が全て中央集権型の仕組みで行う必要があったが、自律分散型のアーキテクチャで低コストで分散システムが構築できること
4. 店舗間のコミュニケーションが容易になり、同地域の店舗同士の連携が容易になったこと

これらの要因から、次世代型のFCは地域密着で、個店同士が本部のコントール度合いを薄め、自律分散のP2Pやメッシュ型による連携による、独自性を強く発揮できる方向へシフトしていくと考える。より地域に密着し、店主の顔も見えるようなマーケティングも可能であろう。実際一部のコンビニなどでは、地域密着型マーケティングを指向するところもではじめている。
また社会的要請としても重要である。現在地域活性化ではベンチャーやNPOばかりが注目されるが、ベンチャーはリスクが大きいし、NPOでは生活していけない状況もある中で、地域の雇用と産業を意識した時に、従来のママパパストアとは異なる、地域密着型でITを活用して大企業と差別化していく「マイクロビジネス」の存在は大きく、育てていくことがとても重要である。しかし、ゼロベースのスタートはハードルが大きい中でFCの手軽さは大きな存在であり、大資本とマイクロビジネスの連携モデルとしても期待できる。

 現在、駅前商店街がさびれ、ロードサイトをはじめ、全国どこへ行っても大資本のコピーのお店があふれる中で、地域に根ざしたマイクロビジネス型の次世代FCモデルは地域の雇用と日本の生活産業の基盤を作る意味でも重要な戦略であり、是非現在のFC事業者をはじめこの方向性を検討していただきたい。

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