藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

2014年2月27日木曜日

LINEの未来を妄想してショートショート書いてみた

私は小さなヘッドホンメーカーを経営している。メーカーと言ってもマンションの一室でやっているベンチャーだ。今の時代はネット上に転がっているヘッドホンの設計図やCADデータをちょちょいといじってLINEが提携しているフォックスコングループが運営するAPIに接続すれば試作,テスト,製造まで彼らの無人工場で全部やってくれるから便利な世の中だ。販売とマーケティングはLINEが提供するAPIに接続すれば広告,販売,決済,顧客管理まで全部やってくれる。LINEはクロネコAPIとも接続されているのでフォックスコンの工場から顧客までの配送もやってくれる。私は顧客の名前も住所も何も知らない。LINEのIDのリストだけが私の管理画面に出ているだけだ。私の場合はたまたま芸術系大学の非常勤講師の古い友人に7000円で書いてもらったキャラクターが人気になり,そのキャラクターのスタンプがLINEで流行ってくれたおかげで私のヘッドホンも売れたというわけだ。まあ売れたのはいいのだが肝心のヘッドホンは普通なので差別化ができない。そりゃそうだ。今の時代誰でもヘッドホンは作れる。貴重な素材や部品を使った大手メーカーの高級品以外は音質も値段だって同じぐらいになる。最後のちょっとしたデザイン,カスタマイズ対応ぐらいが我々ベンチャーメーカーの差別化ポイントだ。それも最近は3Dプリンターの普及でみんな自分でカスタマイズ部品作り始めた。もはや大事なのはネタだ。あの友人の前衛芸術家が「商業主義的なキャラクターデザインなんか遊びながら書ける」と書いてくれたキャラクターだけでこれだけ話題になるとは。人々が求めているのはもはやネタだ。そこで私は考えた「悲劇のヘッドホンメーカー起業家」になろうと。悲しい生い立ちに相次ぐ挫折,7回目の起業でようやく成功とか,割烹着を着た理系女子ということにするか?そうだ耳が聞こえないヘッドホンメーカー社長とか超悲劇的だ。さっそくLINEでブログを始めて生い立ちを創作し始めた。知り合いから聞いたステマAPI会社に接続してお金払うと私のブログの内容に感動したという文章が自動的に作成されて有名人が書いていることになっているブログに掲載してくれるらしいので試してみた。。


素晴らしい反応だ。感動した。号泣したという書き込みがソーシャルメディアで溢れている。誰かが泣けるムービーとか作成してYoutubeにまであげている。ヤフトピにものったぞ!ニコニコからも生番組への出演依頼がきた!!。。。


うーん。失敗した。本当は聞こてるんじゃないかという後ろからの突っ込みに思わず反応して振り向いて怒ってしまった。。。炎上しまくっている。もうダメか。。ん?このバナー広告はなんだ?私が炎上していることをネット上で検知したらしく広告が全部炎上ものになっている。
「炎上の学校 これからはセルフ炎上APIの時代!誰にも縛られない炎上ライフをエンジョイしよう!」
「よせよ燕氏がその炎上から秒速で1億稼ぐAPIの使い方を教えます!燃える男に憧れる彼女もできます!あと1時間で締切ます!」
「イケルハヤタ氏のノウハウをシステム化した炎上API!あなたの炎上ブログで安定的にイラッと炎上を起こす文章を仕込みます!安定収入が得られます!」


まったく困った時代だ。疲れ果てた私は仕方なく自分のLINEIDの変更画面にアクセスした。
これで人生はリセットされる。誰も私の本名も住所も知らない。ニコニコだって顔をアバター化して出演したから本当の顔はほとんど知らない。
購買履歴もネット上の発言も,友人関係も全てが消える。
「さて日本人はもういいかな・・次は。。」

言語と国の設定も変更した私は新しいLINEIDで次の人生をスタートさせた。

「Hello World」 

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